メルマガには書かなかったこと vol.3(カット職人・林)


 【メルマガには書かなかったこと vol.3】

 こんにちは。
 週刊「僕モテ映画聖典マガジン」内の「終わった恋と、映画を数える」という連載で
 新作映画のカットを数えている、カット職人の林賢一です。

 メルマガでは原則として、新作映画だけを語る場なので、
 今回はDVDなどで鑑賞した作品について、少し書きたいと思います。

 最近観た旧作を思いつくまま挙げてみると……

 『ピッチ・パーフェクト』(2012年)
 『カルフォルニア・ダウン』(2015年)
 『福福荘の福ちゃん』(2014年)
 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)

 脈絡はまったくありません。
 劇場公開で見逃した作品かつ、
 深夜に観たいものを観ているだけです。

 『ピッチ・パーフェクト』はずっと観たかったんですが、
 ようやく観ることができました。
 控えめに言って、傑作でした。
 エンドロールの後、すぐさまシナリオ分析をしてしまいました。
 初見の映画は、イチ観客として鑑賞したいので、
 分析目線をできるだけ排除します。
 ですが、傑作の場合は観終わった瞬間にシナリオ構造を分析したくなります。
 とはいっても、プロットを全部書き起こすとか、そこまでするわけではなく、
 どこまでが1幕、2幕はここまでで……ミッドポイントは?
 3幕はココからで、などと箇条書きするくらいなのですが、
 これがまた楽しい。

 映画の秘密(といってもたいしたことじゃないんですが)が
 明らかになるようで、「やっぱりこの作品も作劇がしっかりしてる!」
 などと、幼稚園児が買ってもらったばかりのオモチャを遊ぶように、
 ただこねくりまわすのが悦楽なのです。

 * * * * *

 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』も前評判というか、
 批評などで何度も目にする作品なので、ずっと観たかったのですが、
 なぜか、2016年の夏にふと観ることになりました。
 劇場公開から32年がたっていますーー

 で、観てみたら……
 まったく理解できませんでした。
 時間軸の複雑なSFは好きですし、タイムリープものも大好物です。
 ですが、この作品に関しては理解できませんでした。

 これは作者が説明を放棄しているとかそういうことではなく、
 巡りあいなんだなぁ、と思いました。
 なんとなく大人になって、ふわっと観るということは、
 ある程度の評価や批評を読んだ身を差し引いて、
 カット的に映画だけを観るわけです。
 
 ある意味、文脈などを気にする必要もないし、純粋に観ました。
 その結果、意味がわからない、という(わたくし的な)結末。
 これはわたくしの物語リテラシーが、
 近年のスジが丁寧な映画を観すぎているから低下しているのか。
 それともこの映画が普遍的な複雑さを有しているのか。
 わたくしにはわかりません。
 ただ、これまでの批評で目にしていた、
 この作品が映画史的にもアニメ的にも重要な作品である、
 という大前提はわたくしの中で崩壊しました。
 やはり自分の目で観なくては、ダメだなぁ、と実感しました。

 * * * * *

 さて。
 今週は劇場で『ペレ』という、
 サッカーの王様ペレの伝記映画のカット数を数えてきました。
 来週のメルマガの連載ではそれについて書こうと思います。

 サッカーの試合カットに注目しながら数えたのですが、
 果たして、何カットだったのか?
 スポーツ映画でもあるので、その視点でも何か書ければよいのですが。

 * * * * *

 ところで。
 先週の入江監督が連載で『フレンジー』を取り上げたり、
 わたくしも月に1回、ヒッチコック作品のカット数を数えていることもあり、
 ヒッチコック熱がいつも以上に高まっている1週間でもありました。
 なので、ずっとヒッチコック関連の映画本を読んでいます。

 『ヒッチコック映画自身』(リュミエール叢書・ちくま書房)
 『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』(加藤幹郎・みすず書房)

 前者はヒッチコックの各所のインタビューを抜粋したもので、
 後者は『裏窓』についての批評なのですが、
 同事に読むとさらに理解が深まります。
 加藤幹郎さんは「ヒッチコックがインタビューで本当のことを言っているとは限らない」(大意)
 とまで語っています。
 「むしろインタビューでは嘘をついている可能性がある」とまで言います。
 それは『映画術』でトリュフォーの質問に都合良く
 「うん、うん」と相槌をうっているだけの時だってあるはずだ、
 という、アンチ・インタビュー至上主義であったりします。
 むしろ、そういった製作者の証言などを越えたところに映画はある、と。

 これは同感です。
 映画はクイズではありませんし、
 製作者の意図を読み取った観客が勝者になるゲームではありえません。
 極論をいえば、製作者がどういったテーマで作品を作るのか、
 といったことは、製作的には重要だと思いますが、
 鑑賞者としては一切関係がありません。

 わたくし的にいえば、カットだけがすべて。

 であるならば、監督のインタビューなど読むべきではないのでしょうか?
 ここからが困ったことなんですが、ヒッチコックのインタビューはメチャクチャ面白い。
 先ほどの理論とは矛盾しますが、
 カットだけがすべてであるべきなのに、
 そのカットを語るヒッチコックのインタビューも魅力的なのです。
 (繰り返しますが、それが絶対的な正解ではありえないのですが)

 ここは批評をする上で、いつも悩むところです。
 答えを監督なりのインタビューに委ねてもよいものなのか、
 それともカットだけを信じるべきなのか。
 監督の証言は無視すべきなのか。

 映画評論家の方でも監督の証言ありきで批評をしたりする方もいます。
 もちろん、すべての資料を読んだ上で、それを知らないフリをして批評をすることも可能でしょう。

 カット職人としては、監督の証言などは出来る限り参考にするけれど、
 それを答え扱いしたり、証拠として批評に使うことはしない、という原則でカット分析を書いています。

 その意味では、『ヒッチコック映画自身』と『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』が
 どちらも魅力的でリーダビリティが高く、素晴らしい書物である! 
 と絶賛することに、自分の中で矛盾はありません。
 (もちろん、『映画術』のあの大きな造本だって最高!!)

 いつかメルマガ主催で、ヒッチコック合宿がやりたいですねぇ。

 * * * * *

 気がつけば7月も下旬になろうとしています。
 わたくしの連載で取り上げる映画は……
 7月第3週ーー『ペレ』
 7月第4週ーーヒッチコック

 となります。
 毎月第4週はヒッチコックを数えると決めているのです。
 そして、すぐに8月第1週の特集号になります。
 去年は戦争映画について執筆陣一同で考えた号を配信した記憶があります。
 今年の真夏の特集号は何になるんでしょうか。
 まだ決まっていないようなので、みなさんもお楽しみに。

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 http://www.mag2.com/m/0001320971.html

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 あわせて、よろしくお願いします。
 それでは、今週号でまたお逢いしましょう。

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