『牯嶺街少年殺人事件』とフードコート、と映画日誌vol.23(カット職人・林)


こんにちは、カット職人・林賢一です。

何はなくとも、最近の映画体験で特筆すべきは、
『牯嶺街少年殺人事件』を観たことです。

この映画に対しては、中途半端な気持ちで書けないので、
感想や批評やカット詳細を記すことはしませんが、1つだけ書きます。

たまたま今月、台北に行ったので牯嶺街ってどんな街?
と気になっていたので、実際に行ってみました。
(映画がデジタルリマスターで日本公開されることは知っていたので)
その時は映画を観る前だったので、ふーんこんな街なんだ、くらいしか思えませんでした。
台北の中心部の少し南にある、街というか牯嶺街という通りがあって
その大通りはいわゆる普通のビルが’並んでいて、125ccクラスのスクーターが所狭しと並んでいます。
飲食店なども時折あって、日本でいえば三軒茶屋から世田谷通りに入って環七まで、
みたいな感じです(すみません、たとえ下手ですね。是非グーグルマップで見てみて下さい)。

ですが、その大通りから中に一歩入ると、古い住宅街になる。
ここは興奮しました。
海外に行くと、裏通りを通るのが好きなんですが、牯嶺街の裏通りも興味深かった。
そこに住んでいる人々が実際に生活しているのは裏通りだからです。

で、ここからは『牯嶺街少年殺人事件』を観ながら、街並みを思い返した感想が重なるんですが、
映画内の街並みは今の台北には、当たり前ですが、もはやありません。
『牯嶺街少年殺人事件』が台湾で公開されたのが1991年で、本作の時代背景は1961年。
つまり、撮影当時だって1961年の街並みはなかったわけです。
ですから、今の日本人から観ると、二重に街が消えていることになります。
1961年の牯嶺街はもちろんのこと、1991年の牯嶺街も今はない。
あるのは2017年の牯嶺街だけです。
ですが、牯嶺街の裏通りには、
「もしかしたらココは1961年前のままかもしれない」という一瞬があったりしました。
映画というのは、その瞬間をカットで切り取るというドキュメンタリーでもあります。
ロケーション撮影の場合は、特にその要素が高まります。

そこで思ったりするのです。
もし今の日本でしか撮れないロケーションがあるならどこだろう、と。
もちろん、どこを切り取っても、その時代でしかないカットになり得るでしょう。
ですが、それでもーー
1991年に30年前となる、1961年の牯嶺街を再現したエドワード・ヤン。
たとえば2017年の30年前は、1987年。

今、この文章を書いているのは、地方都市のフードコートです。
家族はセルフサービスでチェーン店で食べ物を購入し、
空いている席に自分で運んで、モリモリ食べます。
若い家族が中心ですが、老夫婦などもけっこうおり、
ひとりノートパソコンをパチパチ打っている自分は完全に浮いています。
こういった風景は1987年にはなかった。
(そういえば、台北の市場にもフードコート的な場所はありましたが、観光地化されていました)
(いま、フードコートの物語が紡がれれば、それは2017年でしか描けないカットになるんでしょうか)
たくましい方は、スーパーで買ったお弁当をフードコートに持ち込んで食べています。
かたやイライラしたお母さんは、子どもに「何食べるか早く決めなさい!」と怒鳴り散らしています。
けっこうカオス。
でもWi-Fiは無料です。
仕事をするには、わたくしにとって最高の環境。
お腹が空いたら、すぐに何か食べることができる。
いくら滞在していても怒られない。なんなら住みたいくらいです。

『牯嶺街少年殺人事件』にもフードコート的な場所がありました。
かき氷屋です。
ちょっとした不良のたまり場として機能していました。
また主人公家族の近所には、ちょっとした食料品を売りつつも、
小さな屋台麺を食べられるようなミニフードコートもありました。
そこには地元の人たちが集まる場所です。
わたくしが今いるフードコートだって同じことです。

牯嶺街からフードコートへ

話は逸れつつも、流れてきましたが、
本質的には同じなんじゃないか、と思うのは、
たまたまどちらも最近体験したからでしょうか。
まとまりがなくて、すみません。

さて、ここ最近のカット職人の映画日誌に参ります。
みなさまの映画体験の参考になれば幸いですー。


3月某日>

昼、港区で会議。

久しぶりに高尾に帰宅すると、玄関前にカラスの死骸が転がっていた。

これはなにかのメタファーなんだろうか、と思わずにはいられない。


3月某日>

昼、イオンシネマ日の出で『モアナと秘密の海』

フードコートで原稿。

夕方、劇場に戻って『人生フルーツ』


3月某日>

昼、立川シネマシティで『お嬢さん』

夕方、原稿。

帰り際に、河出文庫『私が語り伝えたかったこと』河合隼雄を購入。

そういえば最近読んだ本は……


『生成不純文学』木下古栗

『夫のちんぽが入らない』こだま

『くよくよマネジメント』津村記久子

『憲法とは何か』長谷部恭男

『人はなぜ物語を求めるのか』千野帽子

『新しい風土記へ 鶴見俊輔座談』鶴見俊輔

『実験する小説たち: 物語るとは別の仕方で』木原善彦

『楽しい夜』岸本佐和子・編

HERE ヒア』リチャード・マグワイア

『火あぶりにされたサンタクロース』クロード・レヴィ=ストロース

『神話と意味【新装版】』クロード・レヴィ=ストロース

『悪とはなにか』テリー・イーグルトン

『テクストの楽しみ』ロラン・バルト

『乱舞の中世: 白拍子・乱拍子・猿楽』沖本 幸子

『都市を生きぬくための狡知タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』小川さやか


キリがないので印象に残っているのは、このあたり。

たまたまだけど、映画に関する本が一切ないな。


3月某日>

昼、港区で会議。

夕方、移動して原稿。

夜、角川シネマ有楽町で『牯嶺街少年殺人事件』

終わりで、僕モテPodcast収録。ガチ話の最後30分だけ参加。

圧倒的な白い壁越しのカットについて少し喋る。

『人生フルーツ』についても少し触れる。


3月某日>

AM、原稿。

昼、八重洲ブックセンターで『愉しい学問』の翻訳者・森一郎さんのトークショーを聞く。

ニーチェの朗読を聞く。サイゾーの連載でレポートします。

夕方、イオンシネマ日の出で『SING/シング』のカットを数える。

そのままフードコートでメルマガ原稿を書く。


3月某日>

昼、港区で打ち合わせ。毛色の違う原稿になりそう。

夕方、原稿。

夜、新宿武蔵野館で『アシュラ』

深夜、ここ2ヶ月くらいかかりっきりの原稿の問題点をノートにダーっと書きまくる。

すると、光明が見えた。

ノートの前に向かうことの大切さを痛感する。

これで終えられるかもしれない。


3月某日>

昼、109シネマズ菖蒲で『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(をこれから観る)。




週刊メルマガ「僕らのモテるための映画聖典」は毎週配送中です。

鑑賞したすべての映画は、メルマガ内の、
「みんなのレビュー」コーナーでレビュー&星取りしていますので、

是非、ご一読下さい。

「まぐまぐ」
http://www.mag2.com/m/0001320971.html

「ニコニコ動画のブロマガ」
http://ch.nicovideo.jp/eigamote/blomaga


なにとぞ、ご贔屓に。


コメントの投稿

非公開コメント

メルマガ登録はコチラ!

映画モテ太





Podcast「シアター野郎 劇場一番星」
「シアター野郎 劇場一番星」は映画館と映画を同時に語って応援するPodcastです。チェックしときな!!
RSS podcasting
iTunessに登録
カテゴリ
月別アーカイブ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
Podcast Ranking