『人生スイッチ』ひとりガチ話②(カット職人・林)

こんにちは、メルマガでは「映画のカットを数える」連載担当の
カット職人の林です。

さて、前回の大川編集長の記事に触発されて、
わたくしも『人生スイッチ』に関しては、
Podcastの3分だけでは語り残している、
と感じていたので、補足をさせて下さいまし。

まず、わたくしの本作に対する評価からいきますと、

大傑作

だと思ったわけですが、
その内実は大川編集長とかなり違うんですね。
(映画って、同じ傑作という評価だとしても、
 その解釈が違ったりするわけですから、面白いですね)

まず、大川編集長が

「本話は金持ちと貧乏人が、抱えている様々な問題を乗り越え(あるいは先送りし)
 最後の最後で許しあい、和解する話」

とまとめていることに、驚きました。

というのも、わたくしはこの2行目の
「最後の最後で許しあい、和解する話」という部分は
(後述しますが)もちろん同意するものの、
「金持ちと貧乏人」というアングルは全く持たなかったのです。
これは目から鱗でした。
なるほど、そういう見方があったのか、と。
たしかに、そうですね。

では、わたくしはこの映画をどんな風に捉えたかというと、
これも引用になって申し訳ないですが、
「抱えている様々な問題を乗り越え」という部分だけに
強く反応してしまった自分がいるのです。

もっと言うと、この「様々な問題」というのが
この映画の核心であり、世界に広がっている理由なのでは?
とすら思うのです。
そして、その「様々な問題」というのは、実は1つです。
私見では、「様々」ではありません。
ズバっといきます。具体的にはこうです。

「復讐と暴力」

そう、わたくしにとっては、
『人生スイッチ』は「復讐と暴力」がテーマであり、
その「復讐と暴力」という連鎖から、
人はどのようにして脱することができるのか?
というのを観客それぞれに問うているように思えたのです。

各エピソードは大川編集長が分析していますので、
詳細は避けますが、
すべてが「復讐のために暴力」をする話です。
1〜6話のエピソードのすべてがそうです。
もちろん、その舞台ははアルゼンチンですので、
大川編集長の指摘する格差や貧富問題は関わってきます。
ですが、その事実は認めるものの、
もっと根源的、普遍的、本質的には、
「復讐と暴力」が全編に横たわっているのです。

そして、1〜5話のエピソードに関しては、
「復讐のために暴力」が行使されたまま終わります。
6話もラスト直前まではほぼ同じ展開です。
「復讐のための暴力」が’繰り返されます。
ですが、ラストで愛、もしくは身体でコミュニケーションをとることにより、
和解し(たように見え)ます。
つまり、

1〜5話、復讐と暴力!
6話、復讐と暴力・・・・・・ア〜ンド愛!


といった案配なのです。
ここでのポイントは、
6話で「愛(もしくは身体コミュニケーション)」によって、
「復讐と暴力」が解決しうるのだとしたら、
1〜5話はどこかで間違っていた物語なのかもしれない、という点です。
1〜5話だって、どこかで正しい処方をしていれば、事件は起きなかった。

少なくともわたくしは6話のラストを目撃した瞬間、
1〜5話のオセロの黒い石(暴力)がすべて反転して、
白い石(平和)にひっくり返っていく光景が頭をよぎりました。

そう、すべての「復讐と暴力」は、愛(もしくは身体コミュニケーション)によって、
なくすことができる、と。

だとするならば、1〜5話の「あそこでこうしておけば暴力は起きなかった!」
だとか「あそこで我慢して、ああしておけば」という、
映画では不文律とされている「もしも」という妄想が浮上してきます。

おそらく。
(6話のラストが唐突だという指摘はごもっともだとも思うのですが)
この衝撃的な転換によって、
1〜5話に隠された「もしも暴力が行使されなかったら」な物語が
突然、浮き上がってくる。そんな仕組みになっているような気がします。
そこに強く感動もしました。

それは翻ると、自分たちの人生に「復讐と暴力」を持ち込まない、
という(身も蓋もない)規律になるのではないでしょうか。
もしくは、「復讐と暴力」をしそうになったとしても、
持ち込みそうになっても、愛によってそれは止めうる、と!

(もっとも大きな「復讐と暴力」といえば・・・・・・もうお分かりですよね。やめましょう)

わたくしが、『人生スイッチ』にズシンときたのは
この
1〜5話・・・・・・露悪的に描く非道徳な物語
6話・・・・・・ラストですべてをひっくり返す

という構成だったのですが、
監督はインタビューで
「脚本を書いた順番に並べただけだよ」とさらっと語っていました。

ですが、いいんです。
大切なのは解釈です。
それぞれの観客が実生活にどれだけ、反映することができるかが重要です。
たとえ、それが間違った解釈だとしても。
わたくしの解釈と感想は消えません。
みなさんのご意見も是非、聞きたいです。

そうそう、毎週配送している僕モテメルマガの月頭(第1週)号は、
毎月特集号をやっておりまして
9月頭は・・・・・・<スピルバーグ特集号>です!
登録初月は無料なので、チャンスタイムです。

わたくしは『ジョーズ』(1975)のカット数を数えますので、
(心置きなく【カット】バレできる超有名作品すよね)
事前に観られる方は観ておいて下さいー。
それではまた来週、メルマガでお会いしましょうー。


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【書評のコーナー出張版】 どんでん通信vol.1

【注意!】この記事では「叙述トリック」を用いた小説を紹介します。
内容にネタバレはありませんが、すべての小説を先入観なく読みたい方は、読むのをお控えください。

―――

みなさまこんばんは。
メルマガ編集担当でございます。

突然ですが、わたしことメルマガ編集担当、
このたび小説を執筆しましたので、ここに発表いたします。
さっそくいってみよう。

メルマガ編集担当で、「富士の番人」。


この場所から富士山を眺めつづけて、今日でちょうど30年。
晴れた日も、雨の日も。
わたしはこのわたしだけに許された高みから、
現れては消え、水蒸気に煙る霊峰の姿を眺めてきた。
無論、ただ無為に眺めていただけではない。
不審者はいないか、ルールを破る者はいないか……。
私の眼は、このユートピアを守る鷹の目であった。
富士の番人。
そうか。それがわたしに与えられた役割だったのだ――。
感傷に浸るわたしに、「客」が声をかけてくる。
戸惑った様子。
どうやら新参者のようだ。
わたしはこう伝える。
「入浴料、450円だよ」



おわかりでしょうか。
わたしはこれを、
叙述トリックのつもりで書いております。
そして、この駄文を書いて気づかされたことがあります。
叙述トリックを書ける作家ハンパねえな。
ということであります。

熱心なメルマガ読者の方であれば、
なぜわたしが叙述トリックの話をしているのか、ご理解いただけると思います。
わたしこと編集担当、
書評コーナーで『イニシエーション・ラブ』を取り上げて以来、
叙述トリック小説にどハマりしているのであります。

※『イニシエーション・ラブ』評が気になった、あるいは叙述トリックってなんだよ、
と思った方、メルマガvol.122をご参照ください。

ミステリーファンの方にとっては自明のことなのでしょうが、
ものすごい量と質です、日本の叙述トリック小説。
この楽しみをひとりで抱えているのはもったいない!
というわけでこの豊かな金脈を読者のみなさんと共有しようというのが、
本ブログ記事の趣旨であります。

つーわけで、メルマガ編集担当による、
叙述トリック小説レビュー、題して「どんでん通信」vol.1
まずは4冊ほど短くご紹介。
さっそくいってみよー!


『殺戮に至る病』我孫子武丸


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著者の我孫子武丸は、アラフォー世代には懐かしいスーパーファミコンソフト
『かまいたちの夜』の原作者。
本作は、叙述トリックの最高峰という声もあれば、
ただのグロ小説に過ぎないという声もある、賛否両論真っ二つに分かれる作品です。
個人的には、『イニシエーション・ラブ』に次ぐ「世界崩壊感」を味わわせてくれた作品で、
これまた『イニシエーション・ラブ』同様、読み終えて即二周目に突入させられました。

世界崩壊度 ☆☆☆☆☆
吃驚仰天度 ☆☆☆☆
ミステリ度 ☆☆☆☆

といったところ。
二回目の読書が一回目とはまるっきり異なる体験となるという点で、
本作は強くおすすめできる叙述トリック小説だと言えましょう。
ただし、わりかしハードな人体破壊模写があるので、
残酷な表現が苦手な方は、控えたほうがいいかもしれません
(※グロすぎるとかなんとかは、作品の評価とは一切関係ないと思いますが)。


『ハサミ男』殊能将之


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「ハサミ男」と呼ばれるハサミで若い女性を殺害して喜ぶ変態が、
驚くべき偶然から、自分の犯行を装った殺人現場に出くわしてしまう――というお話。
連続殺人犯である「ハサミ男」自身が、自ら偽・ハサミ男の捜索に乗り出す、
いわば探偵役を務めるという構造自体が面白い作品。

とにもかくにもトリック命である叙述トリック小説にあって、
本作は登場人物が実に魅力的。
なんなら続編が読みたい! と思ったんすけど著者は一昨年他界。残念です。

世界崩壊度 ☆☆☆
吃驚仰天度 ☆☆☆☆
ミステリ度 ☆☆☆☆



『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午


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名優・駒木根隆介と、『イニシエーション・ラブ』の話をしていた折に推薦された作品。
「究極の徹夜本」と銘打たれた本作は、過去と現在を行き来しつつ謎に迫る構成が見事。
世界もきっちりひっくり返ります。文字色
トリックが決まった後がちょっと冗長な気がしなくもないような気がしなくもなかったですが、
本作は痛快というか快刀乱麻というか、小説自体のテンポがよく、楽しめます。

世界崩壊度 ☆☆☆☆
吃驚仰天度 ☆☆
ミステリ度 ☆☆


『十角館の殺人』綾辻行人

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「新本格」の旗手・綾辻行人のデビュー作。
無人島に集った七人の男女がひとりまたひとりと殺される。
果たして犯人は誰か――といった内容で、大傑作として名高い作品です。
ただし!
恥を忍んで言わねばなりません。
本作の、有名な「世界を一変させる一行」を読んでも、
わたしは当初、まったくピンときませんでした(涙)。

この作品の「一行」で世界がひっくり返る感覚を味わうには、
ほんのちょっぴりミステリーの知識が必要な気がしてなりません。負け惜しみだけど。

世界崩壊度 ☆
吃驚仰天度 ☆☆☆
ミステリ度 ☆☆☆☆☆


いやー。
それにしてもどれも本当に面白かった。
おかげでガチで寝不足であります。

このブームはしばらく終わらなさそう。
ということで、また何冊か読んだらご報告したいと思います!

僕らのモテるための映画聖典は、
映画監督入江悠を中心に、多彩な執筆陣が新作を映画をしがらみ抜きで語ります。
初月無料ですので、ぜひお気軽にご登録を。

僕モテトークショー&飲み会のお誘い。

みなさまこんばんは。

メルマガ編集担当でございます。

さて、メルマガでは再三告知しておりますが、
きたる5月10日、川越スカラ座さんにてトークショーを開催します。

映画館を盛り上げたい! という僕モテメルマガの気持ちと、
入江悠を応援し(てやり)たい! という川越スカラ座さんの気持ちが、
ひとつになって生まれた今回の企画。
事前に執筆陣で打ち合わせを繰り返し、なんとか盛り上げようと気合十分。

予定している内容はこんな感じ。
・「シアター野郎 劇場一番星」生収録! みなさんからの生質問にも答えます!
・僕らのベスト! みんなの「ジャニーズ映画ベスト」を語ろう。
・僕らのベスト番外編! みんなの「セックスシーンベスト」!


参加は、
映画監督・入江悠
名優・駒木根隆介
女優/文筆家・森下くるみ
カット職人・林賢一
ラッパー・上鈴木伯周
ついでに・私こと編集担当



そしてトークショー後のお楽しみといえばこれ!
僕モテメルマガ名物企画、その名も……
飲み会。

執筆陣と一緒に酒を飲むだけという、要するに打ち上げ。
事前予約制かつ人数限定となってしまいますが、ぜひぜひ、飲みましょう!
※参加資格は、5月10日に川越スカラ座さんでの『ジョーカー・ゲーム』上映ならびにトークショーに参加すること。

参加費は4000円。
細かい時間と場所は、予約のメールをくださった方に直接お伝えします。
件名を「飲み会予約」とし、お名前を明記して、
eigamote@gmail.com
まで、予約希望の旨、ご連絡ください。

小江戸・川越で、映画と映画館を肴に、
(次の日平日だけど)大いに飲みかつ語らいましょー!
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【告知です】今週スペシャル号は「大林宣彦監督特集」!!(入江悠)

こんにちは。
今週は、5週目まであるメルマガ・スペシャル号!
ということで、なにをやろうと考えた末に、これ。
「大林宣彦監督特集」。

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なぜいま「大林宣彦」監督なのか!?
ひとりの監督を一号まるまる扱うことにどんな意義があるのか!?
僕の恒例のメルマガ巻頭エッセーで書きましたので、
ぜひお読みいただけると幸いです。

各執筆陣の取りあげる大林映画はこちら。

私、入江は巻頭エッセーの他に、名物連載でこれ。
薬師丸ひろ子さん主演『ねらわれた学園』。
すげーですぜ、この映画!

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佐藤圭一朗画伯は、地元が新潟・長岡ということでこちら。
『この空の花 長岡花火物語』。うん、さすが地元ならではの視点!

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最近、影響された本や映画がすぐに文体に現れがちなカット職人・林賢一は、
大林監督のデビュー作、『HOUSE』。

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ゴシップ好きな麺俳優・駒木根隆介は、尾道三部作から『転校生』。

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乙女好きな森下くるみは、『水の旅人ー侍KIDS』。
僕も中学生の時に京都を旅行してて、この映画を観て、「あのヒロイン」に恋しましたよ!
甘酸っぱい夏の思い出!

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そして、三十路ラッパー上鈴木伯周はこちら。
『青春デンデケデケデケ』。これもたしかに名作ですね!

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最後に、そして父になったばかりの敏腕編集長・大川は、この不朽の名作を!
『時をかける少女』。凛々しい!可愛い!

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というわけで、今週は盛りだくさん!大林監督盛り!
かなり読み応えありますので、お楽しみに!!

あっ、最後にメルマガでは5月10日川越スカラ座さんでのトークショー&懇親会の告知もありますよ!

【お知らせ】5月10日(日)、川越スカラ座にて僕モテ執筆陣トークショー開催!

こんにちは、入江悠です。

今週の配信しているメルマガでもお知らせしましたが、
「僕らのモテるための映画聖典」執筆陣によるトークショー開催が決定しました!
しかも、今回の場所は、念願の<映画館>!!

メルマガが毎週配信している「僕モテPodcast」をみなさんの前で公開収録しつつ、
古今東西の映画や私の映画制作について縦横無尽にお話したいと思います。
もちろん、人気コーナー「シアター野郎 劇場一番星」もやりますよ!

場所: 埼玉県・川越スカラ座さん http://event.k-scalaza.com/?eid=1264389
日時: 2015年5月10日(日)『ジョーカー・ゲーム』15:30の回上映後

出演者:入江悠(映画監督)
     上鈴木伯周(ラッパー)
      林賢一(脚本家・カット職人)
      駒木根隆介(名優)
      森下くるみ(女優・文筆家)
      大川編集長(メルマガ編集長)
詳細: http://event.k-scalaza.com/?eid=1264389

イベントの内容の詳細は、僕たちのメルマガでまた告知させて頂きます!
ぜひ、5月10日(日)は小江戸・川越へ!

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